【100倍楽しめる】
ダンブルドアの秘密を
どこよりも詳しく
完全解説します!
これまでのあらすじも
【ファンタビ】
ファンタビ完全解説!
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密を、初めて見た人でも分かるように丁寧に、そして詳しく、楽しく解説していきます!ハリー・ポッターシリーズで描かれた伏線が『ダンブルドアの秘密』で回収されたのか・・・?ネタバレを含みますので、ご注意ください!
さあ、ファンタビ「ダンブルドアの秘密」を完全解説&研究します!
⚠注意⚠
・本サイトはファンサイトであり、「ハリー・ポッターシリーズ」「ファンタスティック・ビーストシリーズ」の文章及び固有名詞の著作権はすべてJ・K・ローリング氏に、日本語訳は翻訳者の松岡佑子氏と翻訳出版元の静山社にあります。
・本記事はネタバレを含みます。「ファンタスティック・ビーストシリーズ」に加え、それに関わる「ハリー・ポッターシリーズ」のネタバレも含んでおります。未読の方はご注意ください。
・以下の記事ではWizarding Worldの公式X「Wizarding World (@wizardingworld) / X (twitter.com)」より、画像の引用を行っています。以下で使用されているキャラクターの画像は全て上記Xより引用した画像です。
~主要人物~
ニュート・スキャマンダー
世界一の(そして唯一の)魔法動物学者(マジズーオロジスト)。ホグワーツ魔法魔術学校のハッフルパフ寮出身。
魔法生物を研究し、保護するため、世界中を旅している。『幻の動物とその生息地』を執筆し、一役有名人に。
たくさんの魔法生物のすみかとなっている魔法のトランクを持ち歩いている。
アルバス・ダンブルドア
ホグワーツ魔法魔術学校の闇の魔術に対する防衛術の教授。ニュートの恩師で、グリンデルバルドとも関わりが深い。
※『ハリポタ』では、ホグワーツの校長としてハリーを擁護する偉大な先生。本名は「アルバス・パージバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア」とかなり長い。
アルバス・ダンブルドア
ホグワーツ魔法魔術学校の闇の魔術に対する防衛術の教授。ニュートの恩師で、グリンデルバルドとも関わりが深い。
※『ハリポタ』では、ホグワーツの校長としてハリーを擁護する偉大な先生。本名は「アルバス・パージバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア」とかなり長い。
クイニー・ゴールドスタイン
人の心を読む力(開心術)をもつ自由なアメリカの魔女で、闇祓いティナの妹。ジェイコブに恋する。イルヴァーモーニー魔法魔術学校出身。
ジェイコブ・コワルスキー
マグル(魔法使いではない普通の人間)のパン屋職人で「コワルスキー・クオリティ・ベイクド・グッズ」を営んでいる。クイニーを熱烈に愛する。
クリーデンス・ベアボーン
強力な魔法の力を持つ青年。オブスキュリアル-オブスキュラスを生む者-で、出自が謎に包まれており、自分の素性を知りたがっている。
第2作目で本名が、第3作目で本当の出自が明らかになる。
クリーデンス・ベアボーン
強力な魔法の力を持つ青年。出自が謎に包まれており、自分の素性を知りたがっている。
ゲラート・グリンデルバルド
強力な魔法とカリスマ性を兼ね備える、最強の闇の魔法使い。ダンブルドアとは深い過去が・・・。
※『ハリポタ』にもちょっとだけだが、重要な役回りで登場する。実は1作目「賢者の石」から・・・!
~1作目の復習~
まず、前作を観ていない方向けにあらすじを復習します。
1作目『魔法使いの旅』の重要キャラは「ニュート」「ジェイコブ」「クイニー」そして「ティナ・ゴールドスタイン」の4人です。前者3名は先ほど紹介したとおりですが、ティナは『ダンブルドアの秘密』ではほとんど出てこないので、ここで説明します。
ポーペンティナ・ゴールドスタインは、クイニーの姉で、もともとアメリカの魔法議会「マクーザ」に勤務する闇祓いでした。闇祓いとは、闇の魔法使いを取り締まる超エリート魔法使いのことです。
1作目の舞台は1926年のニューヨーク。ニュートは魔法動物サンダーバードを故郷に帰すため、ニューヨークを訪れていました。そこで偶然であったのが、普通の人間「マグル」のジェイコブでした。しかし、誤って2人のトランクが入れ替わってしまいます。
そうとは知らないジェイコブは、ニュートのトランクから動物を逃がしてしまいます。逃げ出した動物を探すニュートとジェイコブ、しかし街では恐ろしい魔法で建物や道路が次々壊されていきます。この謎を(勝手に)捜査しているのが元闇祓いのティナでした。
一方、魔法反対を掲げるマグルの組織「新セーレム救世軍」は「メアリー・ルー・ベアボーン」が率いていました。彼女の養子にはクリーデンス、チャスティティ、モデスティの3人がいました。
ティナは騒動を起こしていたニュートを魔法議会に連れて行きます。魔法保安局「パーシバル・グレイブス」長官に弁明していたニュートでしたが、グレイブスはニュートのトランクからオブスキュラスを発見し、興味を示します。
オブスキュラスは魔法使いの子どもが生み出す破壊的かつ不安定な力です。自分の魔法を抑え込もうとする子どもは、その力をコントロールできずに、怒りがエネルギーとなってオブスキュラスを生むことがあります。オブスキュラスは周りにも危険を与える一方、本人も長くは生きられないというほど、非常に危険なものです。
ニューヨークの街を破壊する事件の正体を、オブスキュラスだと突き止めたニュート。そのオブスキュラスは、養母から虐待を受けているクリーデンス・ベアボーンのものだとわかりました。
なんとか助けようとするニュートとティナでしたが、魔法議会によってオブスキュラスは破壊されました。そして、衝撃の事実が判明します。
これまで謎の事件を解明しようとしていたパーシバル・グレイブス長官でしたが、その正体はなんと、変身していた闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドでした。彼には、オブスキュラス(=クリーデンス)を仲間に引き入れ、魔法界を支配する目的があったのです。彼は魔法議会に逮捕され、事件は解決されました。
ニューヨークのマグルたちが魔法の力を知ってしまいましたが、魔法界のルールとして、マグルに魔法界の存在が知られてはいけません。ニュートはサンダーバードを使って、マグルたちの記憶を消すことに成功します。
その中にはジェイコブもいました。クイニーとは恋仲になり、ニュートとは良き友となっていたジェイコブでしたが、彼の魔法に関する記憶は全て消えてしまいました。
<1作目ポイント>
〇キャラを把握する!
→ニュート、ティナ、クイニー、ジェイコブ、クリーデンス、グリンデルバルド
〇クイニーとジェイコブはお互いに惹かれ合っている
〇ニュートはティナに惹かれている・・・?
〇グリンデルバルドは逮捕、クリーデンスは破壊されてしまったが・・・
<必須用語>
〇マグル→魔法使いじゃない人たち
〇オブスキュラス→巨大で不安定なエネルギーから生まれる力。クリーデンスはオブスキュラスを生む者である
<魔法界のルール>
マグルに魔法界の存在を知られてはならない。もちろん恋愛も・・・。
「国際魔法使い機密保持法」という法律が定められており、魔法使いはマグルから魔法界を隠さなければならないのです。もしマグル界に出るときがあれば、マグルの服に近づけた身なりにすることも定められています。
<広告>
~2作目の復習~
続いて2作目『黒い魔法使いの誕生』です。
舞台は1927年、なんとグリンデルバルドが初っ端から脱走します。グリンデルバルドは自らの同盟を作り、そのカリスマ性で信奉者を増やしていきます。
イギリス魔法省(政府機関)を訪れたニュートは、旧友のリタ・レストレンジと再会します。リタ・レストレンジはニュートの兄テセウス・スキャマンダーと婚約中でした。テセウスは、イギリスの闇祓い局の局長として働いています。
ダンブルドアはグリンデルバルドを阻止すべく、かつての教え子ニュートに協力を依頼します。
一方、クイニーとジェイコブはニュートの自宅を訪問します。クイニーはジェイコブに魔法をかけて、ロンドンまで連れてきていたのです。ニュートがその魔法を解くと、ジェイコブとクイニーは喧嘩し、クイニーはティナがいるパリに行くと言って、別れて行ってしまいます。ティナは闇祓いに復帰し、パリで調査していたのでした。
ちょっと(かなり)惹かれてるニュートはティナに会うため、ジェイコブとともにパリに向かいます。
ティナはパリの摩訶不思議サーカスでクリーデンスを見つけました。クリーデンスは実は生き残っていたのです(オブスキュラスの姿になっているときは殺すことができません。ニュートだけはこのことを知っていました)。クリーデンスは、ナギニとともにサーカスを脱走します。ナギニは「マレディクタス」という呪いをかけられていて、ヘビに変身しますが、いずれは完全に変身したまま戻れなくなります。彼女はサーカスの見世物にされていましたが、クリーデンスと出会い、心境にも変化がありました。
調査に行き詰まっていたティナは、フランスの魔法使い、ユスフ・カーマと出会います。彼は、自分ならクリーデンスの素性を知っていると持ちかけ、ティナを地下道に誘い込みます。その後、ニュートとジェイコブもユスフによって地下道に閉じ込められ、ティナとの再会を果たします。魔法生物ボウトラックルの活躍で3人は地下道を抜け出すことに成功します。
3人はダンブルドアの親友で600歳の錬金術師「ニコラス・フラメル」の家に避難します。一方で、クイニーはグリンデルバルドから、自分の仲間にならないかと持ちかけられます。魔法界を支配すれば、マグルとの結婚禁止もなくすことができる、ジェイコブと結婚できると誘われたクイニーはグリンデルバルドに近づくようになります。
グリンデルバルドはレストレンジ家の霊廟で信奉者たちの集会を開きます。ニュート、ティナ、リタ、ユスフ、そして招待を受けていたクリーデンスとナギニも霊廟に向かいました。また、クイニーや闇祓いテセウスの姿もありました。グリンデルバルドは自分を信じる者だけが通ることのできる炎の円陣をつくり、信奉者たちを呼び込みます。
クリーデンスは自分の素性を知ることができるのではないかと思い、グリンデルバルドについていくことを決意します。クイニーも自由に愛せる世界を求め、炎をくぐり抜けました。
リタは自分の命を犠牲にし、みんなの逃げる時間を稼ぎました。グリンデルバルドが放った青い炎が燃え広がる中、合流したニコラス・フラメルの指示に従って、ニュートたちは炎を抑え込むことに成功します。
魔法動物ニフラーはこの騒動の中で、グリンデルバルドから「血の誓い」の小瓶を盗み出していました。実は、ダンブルドアとグリンデルバルドは以前深い関係にあり、2人で「血の誓い」を結んでいました。お互いに絶対に戦わないと強い魔法の誓いを立てていたため、ダンブルドアは直接グリンデルバルドと戦うことができないのです。もしかすると「血の誓い」を壊すことができるかもしれない。ニュートはダンブルドアに小瓶を届けました。
一方でグリンデルバルドはヌルメンガード城にて、クリーデンスに本当の名前を教えます。クリーデンスの本名は「アウレリウス・ダンブルドア」なのだと。
<2作目ポイント>
〇グリンデルバルドが多くの仲間を集め、勢力を伸ばしている
〇クイニーやクリーデンスもグリンデルバルドのもとに
〇ダンブルドアとグリンデルバルドは「血の誓い」を結んでいて、お互い戦うことができない
〇グリンデルバルドによれば、クリーデンスは「アウレリウス・ダンブルドア」
<必須用語>
〇血の誓い→強い拘束力を持つ魔法の契約で、2者の血を混ぜて作られる
<広告>
『ダンブルドアの秘密』を解説!【ネタバレあり】
<ちょっと休憩>
ここを知っていれば、もっと楽しい『ダンブルドアの秘密』~伏線「ハリポタ」~
『ダンブルドアの秘密』ではタイトルの通り、「ダンブルドア」の秘密がいくつか明らかとなります。この「ダンブルドア」は私たちがよく知るアルバス・ダンブルドア教授のことだけではありません。この作品では「ダンブルドア一族」の秘密が描かれるのです。
その秘密をしっかり理解するには『ハリポタ』シリーズで描かれた伏線を知っておく必要があります。それでは、前段階部分としてダンブルドア一族、そしてグリンデルバルドについて振り返ってみましょう。
ダンブルドア一家は魔法使いの村「モールド-オン-ザ-ウォルド」に暮らしていました。長男アルバス、次男アバーフォース、長女アリアナの3人兄弟が誕生しました。
アリアナは6歳の時にマグルの少年たちに襲われました。魔法を使っているのを見られ、見せてみろと言われたのです。しかし、アリアナは魔法を見せられませんでした。
妹はめちゃめちゃになった。やつらのせいで。二度と元には戻らなかった。魔法を使おうとはしなかったが、魔法力を消し去ることはできなかった。魔法力が内にこもり、妹を狂わせた。自分で抑えられなくなると、その力が内側から爆発した。妹はときどきおかしくなり、危険になった。
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第28章 アリアナについてアバーフォース
アリアナは自分の魔法の力を制御できず、いつもは優しくいても、ときどき魔法を爆発させてしまうようになりました。怒った父親のパーシバルは娘を襲ったマグルたちを攻撃しました。その結果、パーシバルは魔法使いの監獄「アズカバン」に収監されてしまったのです。パーシバルはそこで一生を送ります。
アリアナの精神不安定な状態は世間から良く思われるものではありませんでした。家族はアリアナを守るため、「ゴドリックの谷」に引っ越し、アリアナの存在を世間には明かさずに安静に過ごさせました。そのため、多くの人がダンブルドア家に娘がいたことを知らなかったのです。※ゴドリックの谷はのちにハリーが誕生するところでもあります。
そんななかで、アリアナの面倒を見ていたのは母親ケンドラとアバーフォースでした。アバーフォースはアリアナの怒りの発作を抑えることができました。
そしてアリアナが14歳のとき、アバーフォースが不在のときに事件が起こります。アリアナがいつもの魔法を爆発させる発作を起こし、母ケンドラを死に至らせてしまったのです。
一方のアルバスは、大変優秀で数々の賞を受賞し、学校が始まって以来の秀才だと称されていました。アリアナの面倒よりも自分のことに夢中でした。
さらに、ゲラート・グリンデルバルドがゴドリックの谷にやってきました。グリンデルバルドはダームストラング専門学校を放校処分となった青年でした。のちにアルバスはこのことについてハリーに語ります。
「わしはのう、ハリー、憤慨したのじゃ」
ダンブルドアはあからさまに、冷たく言い放った。ダンブルドアは、いま、ハリーの頭越しに、遠くのほうを見ていた。
「わしには才能があった。優秀じゃった。わしは逃げ出したかった。輝きたかった。栄光がほしかった。」
「誤解しないでほしい」
ダンブルドアの顔に苦痛が過り、そのためにその表情は再び年老いて見えた。
「わしは、家族を愛しておった。両親を愛し、弟も妹も愛していた。しかし、わしは自分本位だったのじゃよ、ハリー。際立って無欲なきみなどには想像もつかぬほど、利己的だったのじゃ」
「母の死後、傷ついた妹と、つむじ曲がりの弟に対する責任を負わされてしまったわしは、怒りと苦い気持を抱いて村に戻った。籠の鳥だ、才能の浪費だ、わしはそう思った!そのとき、ちょうど、あの男がやってきた……」
「グリンデルバルドじゃ。・・・・・・引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章 当時を振り返ってアルバス・ダンブルドア
2人には野心家で優秀であるという共通点があり、知り合ってすぐに友情を育みます。2人は意見をぶつけ合い、議論を重ねました。2人の目的は、
①「死の秘宝」を集めること
「死の秘宝」とはニワトコの杖、蘇りの石、透明マントの3つのことで、全て手に入れた者は「死を制する者」となれると言われています。グリンデルバルドは軍隊を作るためでしたが、ダンブルドアは亡くなった両親を蘇らせるために「秘宝」に夢中になっていました。
②魔法使いがマグルを支配する世界を作ること
「国際魔法使い機密保持法」を覆して、優秀な魔法使いがマグル界を含む世界を支配しようと計画していました。
ゲラート
魔法使いが支配することは、マグル自身のためだという君の論点だが――僕は、これこそ肝心な点だと思う。
我々は、より大きな善のために支配権を掌握するのだ。このことからくる当然の帰結だが、抵抗にあった場合は、力の行使は必要なだけにとどめ、それ以上であってはならない。
アルバス
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』 アルバスからゲラートへの手紙(一部省略)
上の手紙は、アルバスがグリンデルバルドに送ったものです。2人は「より大きな善のために」”FOR THE GREATER GOOD”というモットーを掲げて計画を遂行しようとしていました。
しかし、アルバスはグリンデルバルドとの議論に夢中になるあまり、弟や妹のことはあまり気にかけていませんでした。2人は計画を進めるため、旅に出ようと考えていました。それに気づいたアバーフォースは怒り、2人に強く忠告します。
計画を台無しにされたように感じたグリンデルバルドとアバーフォースの口論は次第にエスカレートしていき、最終的にはアルバス、グリンデルバルド、アバーフォースの3人の決闘になりました。
それからは三つ巴の争いになり、閃光が飛び、バンバン音がして、妹は発作を起こした。アリアナには耐えられなかったのだ。だから、アリアナは助けようとしたのだと思う。しかし、自分が何をしているのか、アリアナにはよくわかっていなかったのだ。そして、誰がやったのかはわからないが――三人ともその可能性はあった――妹は死んだ
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第28章 アリアナについてアバーフォース
しかし。決闘中の3人のもとにアリアナが近づいてきていました。アリアナは3人を止めようとしていたのかもしれませんが、呪いが飛び交う中で、アリアナの命は奪われてしまいます。
直後、グリンデルバルドは逃亡し、アルバスとグリンデルバルドの関係は2ヶ月ほどで崩れました。アバーフォースはアルバスを責めました。それは葬式で喧嘩し、アルバスの鼻をへし折るほどでした。
アルバスは、アリアナの悲惨な死をずっと心に抱えて生きてきました。アリアナの死からおよそ100年後、『謎のプリンス』では、ハリー・ポッターとともに訪れた洞窟でエメラルドの液体を飲むダンブルドアが幻想を見る様子が描かれます。
おそらくアリアナの死に至ったグリンデルバルドやアバーフォースとの決闘を思い出していたのでしょう。
「あの者たちを傷つけないでくれ、頼む。お願いだ。わしが悪かった。代わりにわしを傷つけてくれ・・・・・・」
「わしは死にたい!やめさせてくれ!」
引用:『謎のプリンス』第28章 水薬を飲むダンブルドア
一方のグリンデルバルドは自らの計画を進めます。アルバスとともに考えた「より大きな善のために」を自身のスローガンに掲げ、残虐行為を正当化しました。グリンデルバルドは敵対するものを閉じ込めるために立てたと言われる「ヌルメンガード城」の入口にもこのスローガンを刻んだそうです。
また、「死の秘宝」の一つであるニワトコの杖を手に入れ、力を増し、魔法界に深刻な被害を与えていったグリンデルバルド。ここからのストーリーが『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』になります。
さて、実はダンブルドアとグリンデルバルドのストーリーは結末が既に決まっています。なんと第1巻『賢者の石』でこう書かれているのです。
アルバス・ダンブルドア
現在ホグワーツ校校長。近代の魔法使いの中でも最も偉大な魔法使いと言われている。とくに、1945年、闇の魔法使いのグリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の十二種類の利用法の発見、パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は、室内楽とボウリング。
引用:『ハリー・ポッターと賢者の石』第6章 蛙チョコレートのカード
1945年の決闘でダンブルドアはグリンデルバルドを打ち破るのです。J・K・ローリングの伏線には脱帽ですね・・・・・・。ファンタスティック・ビーストシリーズも(5部作と言われていますが)1945年まで描く、とされています。
1945年の戦いのあと、グリンデルバルドは自分の城「ヌルメンガード城」に幽閉されます。そして約50年後、ニワトコの杖を探していた闇の魔法使いヴォルデモートに殺されてしまうのです。ここでなんとも興味深いことがあります。グリンデルバルドはヴォルデモートにニワトコの杖の場所を教えるのを拒んだのです。
ダンブルドアはグリンデルバルドが自身の行いを償おうとしたのではないかと考えました。一方ハリーは、ニワトコの杖を生前手にしていたダンブルドアの墓が破壊されないように配慮したのかもしれない、とダンブルドアに言います。グリンデルバルドがかつての友人ダンブルドアに寄せていた思いはどんなものだったのでしょう・・・・・・。
風の便りに、孤独なヌルメンガードの独房で、あの者が後年、悔悟の念を示していたと聞いた。そうであってほしいと思う。自分がしたことを恥じ、恐ろしく思ったと考えたい。ヴォルデモートに嘘をついたのは、償いをしようとしたのであろう。
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第35章 グリンデルバルドについてダンブルドア
『ファンタビ』の本当の主人公はダンブルドアとグリンデルバルドともいえるでしょう。深い関係にあった2人が別れ、一方は負い目と後悔に駆られ、他方は闇の魔法使いとして世界を揺るがす。そんな2人の関係が『ファンタビ』の見どころでもあります。
こうしたダンブルドアの人生を考えると、彼が残した多くの名言もさらに響くことでしょう。
「夢に耽ったり、生きることを忘れてしまうのはよくない」『賢者の石』
「真実か。それはとても美しくも恐ろしいものじゃ。だからこそ注意深く扱わなければなるまい」『賢者の石』
「好奇心は罪ではない。しかし、好奇心は慎重に使わんとな」『炎のゴブレット』
「困ったことに、どういうわけか人間は、自らにとって最悪のものを欲しがるくせがあるようじゃ」『賢者の石』
「勇気にもいろいろある。敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ」『賢者の石』
「自分がほんとうに何者かを示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするかということなんじゃよ」『秘密の部屋』
<広告>
それでは本題へ!
ざっくりと以下のような順番で解説します!
夢とキリンとアコライト
ホッグズ・ヘッドにて
チーム結成&贈り物
国際魔法使い連盟と上級大魔法使い
正しき道を選べ&立候補者
ダンブルドアの作戦と決闘
ダンブルドアの秘密とは
キリンを呪文で復活
必要の部屋からブータンへ
血の誓いはなぜ壊れた
『ダンブルドアの秘密』の舞台はイギリスのあるカフェから始まります。
ダンブルドアとグリンデルバルドがそこで待ち合わせをしていました。「血の誓い」の小瓶を手にしたダンブルドアは「お互いに解放されよう」とグリンデルバルドに持ちかけますが、グリンデルバルドは無視します。
このシーンはダンブルドアの夢なのかもしれません。『ムービー・マジック ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』という本では、このシーンを「ロンドンの夢」として取り扱っています。
ここで会話のポイントが2つ。
①ダンブルドア「君を愛していた」
ダンブルドアはグリンデルバルドを愛していました。以前、原作者のJ・K・ローリング「ダンブルドアはゲイ」と明かしており、若い頃にグリンデルバルドと恋に落ちていたと話していましたが、実際にストーリーの中で描かれるのは初めてです。「ダンブルドアの秘密」の一つはこのダンブルドアとグリンデルバルドの関係性でしょう。
②グリンデルバルド「世界を変えようと言ったのは君だった」
分かりやすく言い換えると、「魔法使いがマグルを支配する世界を作ろうと言ったのはアルバス、君だ」というようなセリフです。ここをちゃんと理解するには『ハリー・ポッターと死の秘宝』の小説を読む必要があります(映画版だと大分カットされています)。
ゲラート
魔法使いが支配することは、マグル自身のためだという君の論点だが――僕は、これこそ肝心な点だと思う。
我々は、より大きな善のために支配権を掌握するのだ。このことからくる当然の帰結だが、抵抗にあった場合は、力の行使は必要なだけにとどめ、それ以上であってはならない。
アルバス
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』 アルバスからゲラートへの手紙(一部省略)
改めて、『死の秘宝』で描かれていたアルバス・ダンブルドアを振り返ってみましょう。特別な才能を持つダンブルドアとグリンデルバルドはすっかり意気投合しました。その際(実は恋に落ちており)2人は魔法使いがマグルを支配する世界を作る計画について議論していました。そのときに送ったのが上記の手紙です。
その後、ダンブルドアの妹、アリアナの死をきっかけに2人の関係は決裂します。ダンブルドアは変わりましたが、グリンデルバルドはその計画をまさに今実行しようとしています。
『より大きな善のために』これは、2人が掲げたモットーでしたが、のちにグリンデルバルド同盟のスローガンになります。グリンデルバルドは自身の行為を正当化するため、『より大きな善のために』と掲げ、自身の監獄「ヌルメンガード城」の入口にもこのスローガンを刻みました。
そして舞台は中国の天子山脈に移ります。
ニュートは人の本性を見抜く美しい動物「キリン」をダンブルドアの元に連れていくという任務が与えられていました。この「キリン」が本作の、超重要な魔法動物となるのです。
キリンは未来を見通し、人の本性を見抜く能力を持つ、中国の伝説の動物です。ずいぶん昔の魔法界では、魔法界の指導者にふさわしい人物を選ぶのに使われました。もし純粋な魂の持ち主がいれば、その人の前でキリンは頭を下げ、お辞儀をします。
実際に麒麟(チーリンと発音されるそうです)は中国神話に登場する伝説上の動物名のだそうです(→麒麟 – Wikipedia)。
キリンの出産のお手伝いをしていたニュートでしたが、グリンデルバルドのアコライトに襲撃されました。
アコライトとはグリンデルバルドの信奉者の中でも、特に関係が深く、彼に同行したり、ヌルメンガード城でともに暮らし、計画を練ったりしている魔法使いのことを言います。
グリンデルバルドのアコライトは、
・ヴィンダ・ロジエール
・カロー
・クロール(前作にて炎で焼かれる)
・アバナシー
・クラフト
・マクダフ
・ナーゲル
・クリーデンス
・クイニー
・ザビニ
こんな感じになっており、今回のキリン襲撃はロジエールとカロー、そしてクリーデンスが行いました。母親のキリンは殺され、生まれたばかりの赤ちゃんキリンをアコライトたちは連れ去ってしまいます。しかし、赤ちゃんはなんと双子でした。もう一匹の赤ちゃんキリンは無事にニュートが助けることができました。
ヴィンダ・ロジエール
グリンデルバルドのアコライト(従者)の1人。フランスの名門ロジエール一族の魔女。
※『ハリポタ』にも死喰い人「エバン・ロジエール」が登場します。おそらく親戚でしょう。
ニュートは意識を失ってしまいましたが、そこを新しい魔法動物「ワイバーン」が助けてくれました。
ちょっと逸れますが、「ワイのワイバーン」の闘いというものがあります。カドガン卿(太った婦人の代わりにグリフィンドール寮を守っていたあの人)は中世イングランドを恐怖に陥れていた「ワイのワイバーン」を倒し、有名になりました。
舞台は「ヌルメンガード城」に移ります。
ヌルメンガード城は、グリンデルバルドが、自らに敵対する者を収容するために建てた監獄です。今現在はグリンデルバルドの居城で活動の拠点と考えていれば良いでしょう。『死の秘宝』で少し言及された程度の居城ですが、最終的にはグリンデルバルド自身が閉じ込められるとされています。
グリンデルバルドは『予言者』でもあります(注・ローリング女史のX(Twitter))。未来を見る能力に長けているのです。前作では、信奉者たちとの集会の中で、マグル界で起こる「第2次世界大戦」を予言し、彼らに訴えかけました。今作でも度々グリンデルバルドは予知能力を用いて、未来を見透かします。ただ、完全に未来を読み取ることができる予言者ではなく、断片的に未来を見ることができる、という程度のものでした。これを活かした作戦をダンブルドアは立てたのですね。
続いて登場するのは「ホッグズ・ヘッド」です。ホッグズ・ヘッドは魔法使いの村「ホグズミード村」に位置する、魔法使いのパブです。店主はアバーフォース・ダンブルドア。アルバス・ダンブルドアの弟に当たります。
ホッグズ・ヘッドもアバーフォースも『ハリポタ』シリーズでは重要ポイントとなっています。実は「ホッグズ・ヘッド」の名称は『賢者の石』でちょこっと出ていたり、ダンブルドア軍団の結成場所になったり、ホグワーツに侵入する際に使われたりもします。ホッグズ・ヘッドには亡くなったダンブルドア家の妹、アリアナの肖像画が掛けられています。
『ホッグズ・ヘッド』なんてとこにゃ・・・・・・村のパブだがな、おかしなやつがウヨウヨしてる。
引用:『ハリー・ポッターと賢者の石』第16章 ハグリッドがドラゴンを手に入れたのがホッグズ・ヘッド
ダンブルドアは、ホッグズ・ヘッドでテセウス(ニュートの兄で闇祓い)に「血の誓い」の小瓶を見せます。ダンブルドアの心の裏切りを感じ取ると、小瓶の鎖がダンブルドアの首を絞めるように動きます。ダンブルドアとグリンデルバルドが若い頃に結んだ「血の誓い」のおかげで、2人はお互いに直接戦うことができないのです。ダンブルドアは誓いを結んだ理由を「愛、傲慢、純真さ」だと言います。
テセウス・スキャマンダー
ニュートの兄で、イギリス魔法省の闇祓い局局長を務めるエリート魔法使い。
婚約者のリタがグリンデルバルドに殺害された。
アバーフォース・ダンブルドア
アルバス・ダンブルドアの弟で、ホグズミード村のパブ「ホッグズ・ヘッド」を経営している。最愛の妹を失い、兄とぎくしゃくした関係ではあるものの、兄に協力する。
アバーフォース・ダンブルドア
アルバス・ダンブルドアの弟で、ホグズミード村のパブ「ホッグズ・ヘッド」を経営している。最愛の妹を失い、兄とぎくしゃくした関係ではあるものの、兄に協力する。
一方のヌルメンガード城では、クリーデンスが悩み、苦しんでいます。クリーデンスは、グリンデルバルドが巧みに煽って、自分を利用してダンブルドアを倒そうとしている事に気づき、騙されているように感じます。
そしてクリーデンスの鏡にはなにやら文字が浮かびます。「許してくれ」この鏡も大切になってきそうですね。
舞台が転々と変わっていくのが本作の特徴です。続いてはマグルの世界「コワルスキー・クオリティ・ベイクド・グッズ」ジェイコブのパン屋さんです。
ここで初登場「ユーラリー・ヒックス」が登場します。
ユーラリー・ヒックス
「ラリー」と呼ばれる。アメリカのイルヴァーモーニー魔法魔術学校の呪文学教授で鍵の番人。ダンブルドアの友人で、彼が信頼を寄せる威勢の良い魔女。ノー・マジ界で生まれたが、イルヴァーモーニーに通い、ティナと親友になる。『上級呪文学』の著者。
ユーラリーは、ダンブルドアからの頼みでジェイコブを誘いに来ていました。魔法界に関わることになるのをためらっていたジェイコブでしたが、最後にはラリーに協力することに決め、「移動キー」でダンブルドアのもとに向かいます。
ここでおなじみの魔法グッズ「移動キー」(ポートキーと呼びます)を紹介しましょう。今作の重要な鍵となる魔法アイテムです。一言で言えば「触ったら他の場所に瞬間移動できる魔法のかかった物体」のことです。「ポータス!」と唱えれば、あらゆる物体が移動キーに変わります。
『ハリポタ』シリーズでは、クィディッチのワールドカップを見に行く際に使われたり、三校対抗試合の優勝カップに仕掛けられていたりと印象的なアイテムですが、欠点は使用後にめちゃくちゃ気持ち悪くなること。きっと車に酔う感じなのでしょうね。
ラリーの移動キーは本でした。彼女は大の本好きで、トランクいっぱいに魔法の本が入っています。
ラリーとジェイコブが到着したのは「魔法特急」の中でした。この魔法特急はドイツのベルリンに向かっています。
さて、ここに集まったのは全部で5人、ニュート、テセウス、ユーラリー、ジェイコブ、そしてバンティとユスフです。バンティとユスフは前作で初登場し、活躍を見せていました。
バンティ・ブロードエーカー
8年間ニュートの忠実な助手として、魔法動物の世話をしている魔女。
ニュートと出会ったのは『幻の動物とその生息地』のサイン会で、彼に夢中になる。
ユスフ・カーマ
フランス系アフリカ人で名門魔法族の末裔の魔法使い。異母妹のリタ・レストレンジがグリンデルバルドに殺され、彼を憎むようになる。
ユスフ・カーマ
フランス系アフリカ人で名門魔法族の末裔の魔法使い。異母妹のリタ・レストレンジがグリンデルバルドに殺され、彼を憎むようになる。
5人のチームが結集し、ダンブルドアからの伝言を受け取ります。その伝言とは、グリンデルバルドの予知能力を避けるため、バラバラに任務を遂行して混乱させることで、グリンデルバルドの企みを阻止しようというものでした。グリンデルバルドの予知能力は断片的なものです。バラバラに行動すれば、グリンデルバルドも読み切れないだろうと考えたのでしょう。
また、ダンブルドアはチーム全員に任務に必要となる贈り物を送ります。
ニュートはたくさんの魔法生物を既に持っていますね。ここでチームの持ち物をおさらいしておきましょう。
ジェイコブ
希少なスネークウッドの杖を受け取ります。杖の芯は入っていないので、魔法は使えません。
テセウス
金色の不死鳥の模様が入った赤いネクタイが贈られます。さあ、何に役立つのでしょうか・・・。
バンティ
ユーラリー
既にトランクの中に、魔法の本を持っています。
ユスフ
リタの写真が入ったロケットペンダントを持っています。
ジェイコブ
希少なスネークウッドの杖を受け取ります。杖の芯は入っていないので、魔法は使えません。
テセウス
金色の不死鳥の模様が入った赤いネクタイが贈られます。さあ、何に役立つのでしょうか・・・。
バンティ
ユーラリー
既にトランクの中に、魔法の本を持っています。
ユスフ
リタの写真が入ったロケットペンダントを持っています。
さあ、グリンデルバルドの打倒を目指しダンブルドアのもとに結集したこのチームは、日本では「デコボコチーム」として紹介されました。英語では「Dumbledore’s first army」(ダンブルドアの最初の軍団)と紹介されていますが、正式な名前はついていません。
ベルリンに到着した一行ですが、バンティとユスフは自分の任務のためにチームを離れ、他のメンバーは「ドイツ魔法省」に向かいます。ベルリンでは、国際魔法使い連盟(略してICW)の指導者を選ぶ選挙の候補者が集まっていました。
ここで、魔法界の政府機関を確認しておきましょう。
――< ドイツ魔法省 >――
ドイツの魔法界の政府機関です。魔法大臣はアントン・フォーゲル。魔法界には各国に魔法省があります。日本魔法省も存在しています。
―<国際魔法使い連盟>―
略してICW。「国際連合」の魔法界バージョンです。各国の魔法省が所属し、世界の魔法界の秩序を保っています。その指導者は「上級大魔法使い」と呼ばれ、魔法界を率います。現在の上級大魔法使いは、こちらもアントン・フォーゲル。任期終了に伴って、次期上級大魔法使いを選ぶ選挙がこれから行われます
アントン・フォーゲル
ドイツの魔法省の魔法大臣で、国際魔法使い連盟の上級大魔法使いを兼任している。
以下、余談です。この「上級大魔法使い」聞き慣れない言葉かもしれません。「会長」「議長」「指導者」などの言葉で登場しており、直接名前は出てくることは少ないからです。
ただ、なじみのある役職なのです。日本版では表記ずれが多く、気づく人も少ないかもしれませんが、『ハリポタ』シリーズの際に、上級大魔法使いを務めていたのはアルバス・ダンブルドアでした。『賢者の石』に登場したダンブルドアの蛙チョコレートカードにはこう書かれています。
校長 アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会員
引用:『ハリー・ポッターと賢者の石』第4章 ダンブルドアのカードの記述
しかし、ヴォルデモートの復活を訴えたダンブルドアは、そのことを認めない魔法省の役人たちの投票によって解任されました(『不死鳥の騎士団』第5章)。
・・・・・アルバス・ダンブルドアはかつて国際魔法使い連盟の上級大魔法使いであり、ウィゼンガモットの主席魔法戦士であったが、・・・・・・
引用:『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第15章 日刊予言者新聞の記事
また、「魔法史」のOWL試験には上級大魔法使いに関する問題が出題されました。
「国際魔法使い連盟の初代最高大魔法使いはピエール・ボナコーであるが、リヒテンシュタインの魔法社会は、その任命に異議を唱えた。何故ならば――」
引用:『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第31章 「魔法史」の試験中、なんとか思い出そうとしているハリー
意外と『ハリポタ』にも出てきている役職でした。以上は全て「Supreme Mugwump」との英語表記を翻訳したものです。翻訳の表記が定まっていない用語ですが、本記事では「上級大魔法使い」を使用していきます。
長くなりました。余談終了です。
ドイツ魔法省に入ろうとした一行(ニュート、テセウス、ラリー、ジェイコブ)でしたが、入口でドイツの闇祓いヘルムートに止められます。ヘルムートとテセウスは知り合いだったため、一行は中に入ることに成功します。
ヘルムート
ドイツの魔法省の闇祓い。実はグリンデルバルドの信奉者の一人である。
ニュートの任務の一つは、上級大魔法使いのフォーゲルにダンブルドアの伝言「正しき道を選べ。楽な道ではなく」と伝えることでした。この言葉は、ダンブルドアがのちにも何度か使用する名言です。
セドリックを忘れるでないぞ。正しきことと、易きことのどちらかの選択を迫られたとき、思い出すのじゃ。
引用:『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』第37章 ホグワーツの生徒たちに対してダンブルドア
しかし、フォーゲルはその忠告を受け入れませんでした。フォーゲルの随行員、ヘンリエッタ・フィッシャー秘書官のサポートのもとで、フォーゲルの演説が始まります。
その演説は衝撃的なものでした。グリンデルバルドを無罪として、放免することとしたのです。また、テセウスは闇祓いヘルムートに捕らえられ、アークスターク牢獄に連れて行かれます。当時、グリンデルバルドの勢力はドイツ魔法省までにも広がっていたのです。
この部分は、現実の世界とも大きく関連があるように見えます。時代は1930年、1次大戦に敗戦したドイツは天文学的な賠償金が課せられ、国民の生活は苦しくなっていました。やがて民衆はカリスマ性のあるリーダーを求めるようになったのです。
ドイツ魔法省を訪れたグリンデルバルドは、熱狂的な群衆に迎え入れられ、フォーゲルはグリンデルバルドを選挙に立候補させようと目論みます。そうしてグリンデルバルドの立候補が認められました。これで、「上級大魔法使い」の立候補者は3人となりました。ブラジルのヴィセンシア・サントス、中国のリウ・タオ、そしてゲラート・グリンデルバルドです。
ヴィセンシア・サントス
ブラジル魔法省の魔法大臣。国際魔法使い連盟の上級大魔法使いの候補者の一人。
リウ・タオ(劉洮)
中国魔法省の魔法大臣。国際魔法使い連盟の上級大魔法使いの候補者の一人。
※実はこの作品ではセリフがない。
リウ・タオ(劉洮)
中国魔法省の魔法大臣。国際魔法使い連盟の上級大魔法使いの候補者の一人。
※実はこの作品ではセリフがない。
一方、「ホッグズ・ヘッド」で弟のアバーフォースと食事していたダンブルドアは、ホグワーツのミネルバ・マクゴナガル教授の報告を受け、ベルリンに向かうことを決意すします。
そのとき、アルバスはアバーフォースの鏡に「孤独がどんな気持ちか、わかるか?」と書かれているのに気づきます。
さて、ダンブルドアのチームが現在どうなっているか確認しましょう。
〇テセウス〇
ヘルムートに捕らえられ、アークスターク牢獄に連れて行かれました。
〇ニュート〇
テセウスを助けるため、アークスターク牢獄に向かいます。そこで見事なマンティコアダンスを披露し、テセウスの救出に成功します。またもニュートの相棒魔法動物ニフラーとピケットのお手柄ですね。また、ダンブルドアがテセウスに贈ったネクタイは移動キーでした。こうしてテセウスとニュートは無事にアークスターク牢獄から脱出します。
〇ラリーとジェイコブ〇
ダンブルドアの指示のもと、今晩開かれる「候補者晩餐会」に出席し、グリンデルバルドによるサントスやリウの暗殺を阻止する任務を負います。
〇バンティ〇
ニュートのトランクを預かっていたバンティは、ダンブルドアの指示に従って任務を遂行します。「オットーの革製品店」に行き、ニュートのトランクを4つ複製してもらうよう頼みます。
〇ユスフ〇
ダンブルドアの任務を遂行し、グリンデルバルドのもとに向かいます。グリンデルバルドの信奉者を偽り、スパイとして活動するという重大な任務を負っていたユスフですが、グリンデルバルドに殺されたリタの記憶を抜き取られてしまいます。カーマはリタを殺されたことに恨みを持っていましたから、さてどうなるでしょうか・・・。また、クイニーが開心術を使い、カーマの心を読み「あなたを信奉している」とグリンデルバルドに伝えます。クイニーが嘘をついたのか、カーマが閉心術で心を読まれないようにしていたのか、考察のしがいがありますね。
〇クイニー〇
ダンブルドアチームではないですが、ダンブルドアはクイニーの気持ちの変化も考えて、任務を計画していたのかもしれません。
その晩、ドイツ魔法省の大広間で開かれた「候補者晩餐会」。グリンデルバルドはそこで競争相手の候補者サントスやリウを暗殺する計画を立てていました。それを止めるため、ラリーとジェイコブは候補者晩餐会に出席します。
しかし、ジェイコブが無謀な行動に出てしまいます。グリンデルバルドに対して杖を抜いてしまったのです。周りから暗殺者だと糾弾されたジェイコブ。まさかの行動に出たジェイコブに驚きを示すラリーでしたが、すぐに移動キーの本を取り出し、無事に逃げ出すことに成功します。
ベルリンに到着したダンブルドアは、クリーデンスと出会います。「どんな気持ちか、わかるか?」クリーデンスが問いかけたその言葉に、ダンブルドアは徐々に気づき始めます。クリーデンスがアルバスを殺そうとし2人は決闘になりますが。
ここでのポイントは3点。
①騙されてきたクリーデンス
「君は捨てられた身だから、ダンブルドア一族に復讐するのだ」と嘘の話をグリンデルバルドから吹き込まれ、ダンブルドアと対立するように仕向けられてきたことにだんだんと気づいてきます。
②反転した鏡の世界
2人の決闘はマグルの世界で起こりますが、魔法をマグルに見られてはいけません。ダンブルドアは全て反転した鏡のような偽のベルリンを作り、そこで決闘します。その後、ダンブルドアは「灯消しライター」を使って真っ暗な世界にすると、現実世界の水たまりが裏側に見えるようになります。これは物事が見かけどおりではないことを示しているようです。
真実は見かけと同じではないぞ、クリーデンス。君が何を聞かされてきたとしても。
引用:『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』ダンブルドア
そして何より大切なのが
③「不死鳥」の存在
前作で、ダンブルドア家は一族が窮地に陥ると、不死鳥が現れるという言い伝えがあることが判明しました。実は、ダンブルドア家の家紋が不死鳥だったり、『秘密の部屋』ではダンブルドアの不死鳥フォークスが印象的に描かれていたりと、ダンブルドア家を象徴する生物が「不死鳥」なのです。
その不死鳥が、ダンブルドアとクリーデンスの決闘中にクリーデンスの上空を飛び回ります。このことは他でもない、クリーデンスがダンブルドア家のメンバーであることをはっきりと示しています。この不死鳥は寿命の終わりに近づいているような灰色がかった様子でした。
「僕の名はアウレリウス」そうしてアルバスはクリーデンスが何者なのかに完全に気がつきます。
ニュート、テセウス、ラリー、ジェイコブはホグワーツに集まり、ダンブルドアと合流し、その晩「ホッグズ・ヘッド」でバンティも加わります。
アバーフォースの鏡に「家に帰りたい」というメッセージがあったのに気がついたニュートはダンブルドアと話します。
この鏡を通してアバーフォースとクリーデンスはメッセージのやりとりをしていました。
ここでダンブルドアの秘密が明かされます。
①クリーデンスの正体
クリーデンスの本当の正体はアバーフォースの息子アウレリウスだったのです。アルバスはアバーフォースの息子がクリーデンスであることを知りませんでした。気がついたのは、決闘の時でした。不死鳥が現れたこと、それはダンブルドア一族を示します。さらに、オブスキュラスを生む者・クリーデンスのもとに現れた死にかけの不死鳥に見覚えがあったのです。
②アリアナの秘密
見覚えがあった、というのはアルバスの妹・アリアナに現れた不死鳥のことでした。実はアリアナはオブスキュラスを生む者でした。この秘密を理解するには『死の秘宝』を知る必要があります。
妹はめちゃめちゃになった。やつらのせいで。二度と元には戻らなかった。魔法を使おうとはしなかったが、魔法力を消し去ることはできなかった。魔法力が内にこもり、妹を狂わせた。自分で抑えられなくなると、その力が内側から爆発した。妹はときどきおかしくなり、危険になった。
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第28章 アリアナについてアバーフォース
そうした状況の中で、アルバスはグリンデルバルドと出会い、「より大きな善のために」新しい魔法界の秩序を立てる計画を立て、家を出ようとさえしていました。アリアナの面倒を見ることが二の次となったアルバスにアバーフォースは怒り、2人は口論になりました。アバーフォースが杖を抜き、グリンデルバルドも杖を抜きました。
それからは三つ巴の争いになり、閃光が飛び、バンバン音がして、妹は発作を起こした。アリアナには耐えられなかったのだ。だから、アリアナは助けようとしたのだと思う。しかし、自分が何をしているのか、アリアナにはよくわかっていなかったのだ。そして、誰がやったのかはわからないが――三人ともその可能性はあった――妹は死んだ
引用:『ハリー・ポッターと死の秘宝』第28章 アリアナについてアバーフォース
これらの描写から「アリアナはオブスキュラスを生む者ではないか」という推測が立てられていましたが、それが実際に明らかとなりました。アリアナはクリーデンス(アウレリウス)と同じく、魔法の力を制御できなくなってオブスキュラスを生むものとなったのです。アルバスは大きな過ちを犯しました。そうして妹のアリアナを失い、そのことをずっと心に抱えています。
グリンデルバルドはニュートを襲って手に入れた「キリン」に魔法をかけ、生き返らせます。クリーデンスとロジエール、そして上級大魔法使いフォーゲルも見守っています。その歌うような魔法は、
〇リナベイト 蘇生せよ
失神状態の生物を生き返らせる呪文です。
〇ヴルネラ サネントゥール 傷よ癒えよ
大きな傷を治す呪文です。映画『謎のプリンス』ではスネイプがマルフォイの傷を治すのに使用しました(翻訳は「ヴァルネラ」でしたが同じ呪文です)。
この魔法によって、死んだキリンを生き返らせました。死者を蘇らせる闇の魔術を「ネクロマンシー」と呼びます。『ハリポタ』ではネクロマンシーで蘇った「亡者」が登場します(『謎のプリンス』では、ハリーやダンブルドアに襲いかかります)。このキリンも「亡者」と同様に、完全に生きている状態になったのではなく、動きを取り戻して魔法使いの命令に従って動くようになったのです。
グリンデルバルドの企みは、そのキリンが自分を上級大魔法使いに選ぶようにすることでした。フォーゲルのもとで魔法にかかったキリンを利用し、自分が魔法界を率いよう。それがグリンデルバルドの計画でした。
順調に進み満足していたグリンデルバルドでしたが、あることに気がつきます。キリンは双子でもう一匹いたことが水の中に浮かび上がったのです。グリンデルバルドはクリーデンスの失敗として彼を追い詰めます。
ダンブルドアのチームは「必要の部屋」に集まりました。
「必要の部屋」は『ハリポタ』で「ダンブルドア軍団」の拠点となっているなど何度も登場する大事な部屋です。
ダンブルドアがグリンデルバルドに対抗して立てた計画は、ニュートのトランクを複製することでどのトランクにキリンが入っているのかを分からなくさせることで、混乱させるというものでした。自分たちも誰が持っているか分からない中で、彼らは上級大魔法使い選挙が行われるブータンに向かいました。
スパイをしていたユスフはダンブルドアのチームに戻り、本当の忠誠心はダンブルドア側にあることを示しました。ダンブルドアチームは双子のもう一匹のキリンを捕まえようとするグリンデルバルドの信奉者たちと争いを繰り広げます。
そんな中、ニュートはドイツ魔法省のヘンリエッタ・フィッシャー秘書官にトランクを奪い取られます。
「ウォーク・オブ・キリン」の儀式を行って上級大魔法使いを決定することをフォーゲルが宣告します。グリンデルバルドが魔法をかけたキリンは、案の定グリンデルバルドを選び、次期上級大魔法使いが決定します。新大魔法使いのグリンデルバルドはマグルとの戦いを宣言し、暗殺を企てたとされるジェイコブに「磔の呪い」(クルーシオ!苦しめ!)をかけます。
しかしクリーデンスがグリンデルバルドの悪事を暴露します。ニュートもそれに続いて、キリンはもう一匹いることを明かします。そのときバンティが現れ、本当のキリンの入ったトランクをニュートのもとに届けたのです。これで、グリンデルバルドの計画は完全に崩れたことになります。
真のキリンは最初、ダンブルドアの前でお辞儀をしましたが、ダンブルドアはそれを拒否しました。そしてキリンはサントスのもとに歩み、彼女を上級大魔法使いに選びました。計画を崩されて怒ったグリンデルバルドはクリーデンスに向けて呪文を放ちました。それと同時に、アルバスとアバーフォース2人が反射的に保護呪文を放ち、クリーデンスを守りました。
このとき、奇跡が起こります。「血の誓い」が破られたのです。ダンブルドアとグリンデルバルドは直接お互いを攻撃することはできませんが、今回はアルバスはクリーデンスを守るために魔法をかけ、グリンデルバルドはクリーデンスを攻撃するために魔法をかける、すなわち第三者を挟むかたちでお互いが対立することになったため、「血の誓い」が壊れたのです。
誓いが壊れ、戦えるようになった彼らは決闘を始めますが、決着がつかないまま、グリンデルバルドは印象的な言葉を残して下がります。
この先、誰が君を愛してくれる、ダンブルドア?
君は孤独だ。
私は君の敵だったことはない。これまでも、今も。
引用:『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』 アルバスに向けてグリンデルバルド
アバーフォースは衰弱しきったクリーデンスを抱きかかえます。ここでも印象的な言葉を残しています。
クリーデンス:僕のこと気に掛けたことある?
アバーフォース:いつもだ。家に帰ろう。
引用:『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』 クリーデンスとアバーフォース
この「いつもだ」と言うセリフは英語では “always.” と書かれています。
これはセブルス・スネイプの名言「永久に」(とわに)と同じなんです!ファン歓喜のオマージュシーンでした。
ニューヨークでは、ジェイコブとクイニーの結婚式が行われました。
花婿の付添人はニュート、そして花嫁の付添人はティナです。ニュートとティナはやっと再会を果たしました。式にはテセウスや、ラリー、バンティも参加します。
離れたところから眺めていたダンブルドアはニュートに礼を言い、歩いていきました。
<広告>
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は評価こそ高くはないものの、これまで『ハリー・ポッター』シリーズで語られてきたことを踏まえたうえで考えると、とても魅力溢れる切ない物語に思えてきます。
個人的には言葉を唱えて発する呪文が好きなので、「リナベイト」「ヴルネラ・サネントゥール」くらいしかなかったのが少し残念でしたが、どこをとってもかっこいいシーンばかりでかなり好きな作品です。
この記事を書くに当たって、改めてハリー・ポッターを読み返しましたが、こんなに深い台詞だったんだとかここがつながっていたんだとか新たな発見がたくさんあり、ハリポタやファンタビがますます好きになりました!
ファンタビは全部で5部作、打ち切りという噂も出ていますが(次回作については、こちらで解説しました~)、次回作以降も楽しみにしていたいところですね!まだまだ、ダンブルドアとグリンデルバルドの関係に目が離せません!
↓広告(ファンタビ関連本のムービー・マジックシリーズおすすめです!)【こちらの記事で紹介】
(ハリポタファンにとてもおすすめ)